曳山博物館は、文化財としての曳山祭りの保存と伝承の場であり、曳山が展示公開され、祭りの執行に合わせて曳山の出し入れが行われる。街中に点在する伝統的な13の山蔵のシンボルとして、シンメトリーな4戸の山蔵の集合体からなる曳山収蔵庫を中心にすえた。この瓦屋根と漆喰壁は、博物館通りに面した町屋の勾配にあわせた屋根や、米川沿いの伝統的な蔵に見たてた工房棟と共に、長浜の伝統的な街並み景観との調和をめざすものである。町のメインストリートである大手門通りの角地に位置する伝承スタジオは、子供歌舞伎の技と心の伝承の場である共に、広場との一体化による野外劇場など、様々なイベントの場でもある。伝承スタジオの最上部は黒漆喰、黒色タイルと瓦屋根の櫓で、現代に引き継がれる町衆文化のシンボル搭である。
また、景観的な役割にとどまらず、都心の生活空間をさらに魅力的にするために、屋内外の空間の有機的な連続性や、広場や路地の新たな創出により、周辺の回遊性を高めることを目指した。博物館としても、展示室に設けた窓から見える曳山解体修理のためのドックや、曳山の収蔵展示を可能にする収蔵庫の構造等、独自なものになっている。

2000年3月撮影
Photo Forward Stroke Inc.